住宅の屋根を塗装中に転落

業種 | 木造家屋建築工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 屋根、はり、もや、けた、合掌 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 木造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 屋根、屋上から墜落 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100797
発生状況
この災害は、個人住宅の屋根、内壁、外壁等の塗装工事中に発生したものである。
この工事は、X社工事部長A、作業者BとCの3名で行うことになった。初日、先ず墜落防止用ロープを設置するため、Aは母屋の北側にある立木にロープを結び、母屋の屋根頂部(「ぐし」)上を通して母屋南側まで掛け(立木ロープ)、次に母屋の南側にある作業小屋根内の2Fの柱にロープを結び、母屋の屋根上を北側にまで掛けた(小屋ロープ)。次いで、Aは高圧洗浄機のホースを持って屋根全体の洗浄を行った。 2日目には、初日に洗浄した屋根のさびているところにさび止めを塗布し、3日目には被災者が塗料吹き付け機械により母屋南側軒先の一部、2階屋根および「ぐし」の上塗り作業を行ったが、作業終了後、Aは小屋ロープが発注者の玄関先で邪魔になるので外すようにBに命じ、取り外させた。 4日目の災害発生当日、3人は午前8時30分頃に現場に到着したが、屋根が露で濡れていたため、AはBにドライヤーで乾かすよう指示した後、屋根の「ぐし」の菱形状の凹み模様を白色塗料で塗るため、身体に立木ロープを巻きつけ、塗料缶、刷毛、水滴を拭き取るためのウェス、ドライヤーの延長コードを持って、母屋南側から屋根へ上がっていった。 Bは玄関屋根、母屋屋根の順で乾燥作業を行い、午前9時50分頃作業終えたとき、母屋屋根の南西端から約7m下の水路の洗い場にAが顔をつけて倒れているのを発見し、救急車を呼んだが被災者はすでに死亡していた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 墜落防止用措置を行っていなかったこと
墜落危険のある屋根上での作業に際し、墜落防止のために、母屋屋根南側については立木ロープ、屋根北側については小屋ロープを取り付けていたが、災害発生前日に小屋ロープを取り外しており、当日の屋根全体の作業については墜落防止措置は十分でなかった。また、作業者に安全帯を着用させることなく、立木ロープあるいは小屋ロープを身体に巻きつけただけの墜落防止措置として不完全な状態で作業を行わせていた。(安衛則第519条) |
2 | 墜落防止用のロープの固定方法が適切でなかったこと
母屋を横断する形(長手方向)で屋根上に渡されていた立木ロープは、一端が立木に固定されていたものの、他端はフリーの状態で作業が行われていたため、北側屋根上での作業については、墜落を防止する機能は有しないものであった。 |
3 | 安全帯の使用についての教育等の安全管理を行っていなかったこと
この会社では、採用時に屋根上の作業について、墜落防止用ロープの両端を固定するように指導はしていたが、そのロープに安全帯を取り付けること等の教育は行ってはおらず、また、実際の作業においては墜落防止用ロープの一端だけを固定して作業を行っていることを知っていながら黙認していた。 また、母屋周辺に足場を組み立てること、安全な親ロープに安全帯を確実に取り付けること等の墜落防止措置に関する安全教育等の管理をほとんど実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 墜落防止措置を確実に実施すること
高さが2m以上の個所の作業であって墜落危険のある場合には、足場を組み立てて作業床を設けること、安全ネットを張ること、親ロープの確実な取り付けおよび安全帯を使用させることが必要であり、工事期間が比較的短い建物の補修・塗装工事等においてもこれらの措置を確実に実施のうえ作業を行わせる。(安衛則第518~520条) |
2 | 安全教育を十分に行うこと
平屋建ての民家等は、ビル等に比較して地上からの高さが比較的低いため墜落による危険を十分に認識しないまま、安易に作業に従事させることが少なくないが、2m以下の高さから転落して死亡する例も多いので、高所での作業に従事させる労働者に対してはあらかじめ墜落防止措置等について十分な安全教育を実施する。(安衛則第35条) |
3 | 安全管理を十分に実施すること
軒の高さが5m以上の木造建築物の構造部材の組立又はこれに伴う屋根下地若しくは外壁部材の取り付けの作業を行う場合には、一定の技能講習を修了した者を作業主任者として選任する必要があるが、それ以下の同種の作業あるいは類似の作業であっても作業の責任者として墜落防止措置について十分な知識と経験を有する者を指名し、その者の直接指揮の下に作業を行わせる。(安衛法第14条・令第6条) また、経営トップは、作業の安全に関する教育、指示を行うとともに、定期あるいは随時に作業現場を巡視し、指示事項の遵守状況等の確認と必要な指示を行う。 |